研究課題
基盤研究(C)
脊髄損傷や脳血管障害などの神経障害並びに前立腺肥大や加齢が原因となり、排尿障害(過活動膀胱や排尿困難など)が起こることが知られている。本研究では、排尿障害の病態モデルとして、脊椎損傷、脳梗塞及び尿道部分閉塞ラットを作成し、排尿を司る膀胱のムスカリン性受容体の変動、さらに過活動膀胱の治療に用いられる抗コリン薬の膀胱受容体結合動態を調べ、以下の結果を得た。1)脊椎損傷ラットにおいて、(1).膀胱不随意収縮の発現の程度は膀胱重量と相関する傾向がみられた。(2).不随意収縮を呈した膀胱におけるムスカリン性受容体数([^3H]MS特異的結合のBmax値)は、不随意収縮がみられなかった膀胱に比べ有意に高値を示した。[3^H] 結合の解離定数(Kd値)は不随意収縮の有無に関係なく一定値を示した。2)脳梗塞ラットにおいて、(1).体重及び膀胱重量は、対照群の場合と差異がなかったが、尿道部分閉塞ラットの膀胱重量は約6倍大きかった。(2).膀胱容量と一回排尿量は対照群に比べ減少し、残尿量は増加した。また、尿道閉塞ラットでは排尿前収縮が出現し、膀胱容量と一回排尿量は増加した。(3).膀胱におけるムスカリン性受容体数は34%有意に高値を示した。一方、尿道部分閉塞ラットの膀胱受容体結合パラメータは対照群と有意な差異がなかった。3)抗コリン薬のオキシブチニン、トルテロジン及びソリフェナシンは、ラット経口投与後、膀胱ムスカリン性受容体に結合し、オキシブチニンに比べ後者の2薬物は膀胱受容体に選択的に結合した。【結論】脊椎損傷ラット膀胱における不随意収縮の発現に、膀胱ムスカリン性受容体量の増加が関与すること、脳梗塞及び尿道部分閉塞ラットにおいて排尿障害が認められ、脳梗塞ラット膀胱ムスカリン性受容体量が増加することが示唆された。また、新規抗コリン薬は膀胱受容体選択性を示すことを初めて明らかにした。
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