研究課題/領域番号 |
18590238
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
吉栖 正典 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (60294667)
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研究分担者 |
佐藤 広康 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (90150309)
中山 均 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (50133195)
磯崎 稔 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (60159811)
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キーワード | MAPキナーゼ / Big MAP kinase 1 / メタボリックシンドローム / インスリン抵抗性 / 糖尿病 / 血管障害 / TNF-α / 血流 |
研究概要 |
新しいMitogen-Activated Protein(MAP) キナーゼである、Big MAP kinase 1 (BMK1)のメタボリックシンドロームにおける生理的役割について、培養ラット大動脈平滑筋細胞(RASMC)とヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用いたin vitroの実験で検討した。 1)RASMCにおいて、血小板由来細胞増殖因子(PDGF)の刺激により濃度依存的なBMK1の活性の上昇が認められた。また、PDGF刺激により、アダプタータンパク質Gab1とチロシン脱リン酸化酵素SHP-2の結合が増加していた。SHP-2の酵素活性抑制型変異体の遺伝子導入によって、PDGF刺激によるBMK1の活性化が抑制された。BMK1の上流にあるMEK5を遺伝子抑制するとPDGF刺激によるRASMCの遊走は抑制された。ポリエチレンカフを大腿動脈周囲に留置した炎症性血管障害モデルマウスの血管平滑筋ではBMK1の活性化が認められた。 2)HUVECにおいて、炎症性サイトカインのひとつである腫瘍壊死因子(TNF-α)は、MAPキナーゼのひとつJNKを活性化させ、細胞接着分子VCAM-1の発現を促進する。定常的な層流の血流刺激(Laminar Shear Stress)をHWECに加えるとBMK1の活性の上昇が認められ、TNF-αによるJNKの活性化は抑制された。BMK1の上流にあるMEK5の特異的阻害剤BIXO2188を用いた実験結果から、BMK1はVCAM-1の発現などに導くJNKの活性化に抑制的に作用していることが示唆された。 これらの結果から、糖尿病や炎症を背景としたメタボリックシンドロームにおける血管障害ではBMK1の活性が上昇していることが明らかになった。本研究成果により、BMK1及びその関連分子はメタボリックシンドローム治療における分子創薬ターゲットになりうる可能性が示された。
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