本研究の目的は、心房筋細胞の興奮性制御におけるPCTP-Lの役割を明らかにし、心房筋に発現するL型Ca^<2+>チャネルの二つのサブタイプ(Cav1.2およびCav1.3)とPCTP-Lの結合および機能制御の特異性を検討し、心房性不整脈とそれらの活性制御機構の関係を明らかにすることである。本年度は下記の研究を遂行し成果を得た。 1.心房筋細胞の興奮性制御におけるPCTP-Lとそのリン酸化機構の意義の検討:PCTP-Lはカゼインキナーゼ(CK2)によりリン酸化されるがその生理的意義は不明である。そこでshRNAを用いたPCTP-Lのノックダウン法およびCK2特異的阻害剤を用いて心房筋細胞の興奮性制御におけるPCTP-LとCK-2の役割を検討した。PCTP-Lのノックダウンにより自動能が約2倍に亢進した。 2.L型Ca^<2+>チャネルの開閉制御における細胞内カルボキシル末端領域の役割:申請者は既にL型Ca^<2+>チャネルα_<1C>サブユニット(Cav1.2)の細胞内カルボキシル末端の1705番目〜1777番目のアミノ酸から成る領域がPCTP-Lとの相互作用に必要であることを見出している。一方、Cav1.2のカルボキシル末端領域をCav1.3の該当領域に置換するとPCTP-Lとの相互作用は消失したことから、Cav1.2とPCTP-Lの相互作用はサブタイプ特異的であることが明らかとなった。また、この領域がCav1.2とCav1.3の電位依存性不活性化キネティクスの差異を担うことが明らかとなった。 3.L型Ca^<2+>チャネルとPCTP-Lの蛋白間相互作用に関わるPCTP-L側のドメインの決定:Cav1.2との相互作用および機能修飾に必要なPCTP-L側の領域を同定する目的でアミノ末端領域およびカルボキシル末端領域の欠損変異体を作製し解析したところ、PCTP-Lのカルボキシル末端領域がCav1.2の昨日調節に必要であることが明らかとなった。 4.PCTP-Lノックアウトマウスの作製:PCTP-L(-/-)マウス作製用のターゲッティングベクターを構築しES細胞に導入し、組換えクローンの選別を行っている。
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