研究概要 |
本科研費によって,次のような業績を得た。 1)糖尿病ラットの胸部大動脈を臓器培養し,培養液にインスリンを付加するとONOO-が増加し,これがsarcoreticulum calcium ATPase(SERCA)をニトロ化することによって,NOを介する弛緩反応が著明に減弱することが明らかとなった(Free Rad.Biol.Med.43:431-443,2007)。 2)2型糖尿病ラット(OLETF)の腸間膜動脈標本において,EDHFを介する弛緩反応は著明に減弱した。この原因として,収縮性のプロスタノイド(thromboxane A_2)の産生が増加しており,このthromboxane A_2がEDHFを介する弛緩反応を著明に減弱することが明らかとなった(Am.J.Physiol. Heart Circ.Physiol. 293:H1480-H1490,2007)。 3)PPARγ刺激薬であるピオグリタゾンを糖尿病ラットに慢性投与すると,転写因子のサブユニットであるj-junの発現が減少し,preproET-1の発現が減少した。血中ET-1濃度も減少し,ET-1が減少することによって,NAD(P)Hoxidaseの発現も減少し,スーパーオキシドの産生も減少した。これらの一連の反応により,内皮細胞の機能が著明に改善した。つまり,糖尿病時にはPPARγ低下→AP-1増加増加→エンドセリン-1増加→NAD(P)Hoxidase発現増加という経路を経て内皮細胞の機能減弱(動脈硬化誘発)と云う仮説が成り立つことになる。
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