研究概要 |
動脈硬化は虚血性心疾患や脳血管障害などさまざまの疾患を起こす要因となる。そのため、動脈硬化の予防および治療は重要な課題となっできでいる。我々は、高血圧治療薬であるカルシウム拮抗薬が示す抗動脈硬化作用に着目した。本来、カルシウム拮抗薬は、L-type Ca^<2+> channel遮断により血管平滑筋を弛緩させ血圧を下げるが、ある種のカルシウム拮抗薬は、L-type Ca^<2+> channel遮断作用以外の機序によっで動脈硬化の一因である血管平滑筋細胞の増殖を抑制する。 そこで我々は、内在性L-type Ca^<2+> channelを持たないヒト扁平上皮がん細胞(A431)を標的細胞としで用い、細胞内カルシウムイオン動態を指標にしでカルシウム拮抗薬の細胞増殖に及ぼす影響を検討した。その結果、アムロジピン、ニカルジピンなどのカルシウム拮抗薬が当該細胞の増殖を抑制することが分かった。また、その増殖抑制作用に容量性カルシウム流入の抑制が関与していることが明らかになった。 また、細胞周期進行においで細胞内カルシウムイオンの上昇が必要であるが、カルシウム拮抗薬アムロジピンはA431細胞の細胞周期をG1期で停止させた。この時、G1期からS期進行に必須であるpRB(retinoblastoma protein)のリン酸化レベルは低下し、cyclin D1,cyclin dependent kinase4(CDK4)および転写因子E2F1のタンパク質発現レベルも低下した。一方、CDK inhibitorsの1つであるp21タンパク質の発現は亢進した。また、cyclin/CDK複合体のキナーゼ活性は低下した。このように、カルシウム拮抗薬の示す細胞増殖抑制作用の機序の一端が明らかになり,カルシウムシグナリング関連分子を標的とする抗動脈硬化薬の創薬にむけで有用な知見が得られている。
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