研究概要 |
1)PGE_2のアルカリ分泌促進作用に関与するEP受容体サブタイプは、胃ではEP1、十二指腸ではEP3/EP4であり、また胃ではCa^<2+>、十二指腸ではCa^<2+>/cAMPが細胞内メディエーターとして作動することが判明した。 2)NOR3(NOの供与体)もcGMPを介してアルカリ分泌を促進するが、この作用はインドメタシンおよびSC-560の前処置によって抑制されるが、ロフェコキシブは影響を与えなかった。NOR3は胃十二指腸においてPGE_2産生を増大させた。NOのアルカリ分泌促進作用はcGMP依存性にCOX-1を活性化し、PGE_2を介して発現するものと推察された。 3)摘出マウスの胃・十二指腸を用い、PGE_2およびNOR3によるアルカリ分泌反応に対するサブタイプ選択的PDE阻害薬の影響を検討した。十二指腸におけるPGE_2,の作用はPDEIおよびIII阻害薬によって増大したが、NOR3作用はPDEIによってのみ有意に増大した。一方、胃におけるPGE_2の作用は如何なるPDE阻害薬によっても影響を受けなかったが、NOR3の作用はPDEIおよびVの阻害薬によって有意に増大した。すなわち、十二指腸ではPDEIおよびIIIまた胃ではPDEIおよびVがアルカリ分泌の局所性調節に関与していることが判明した。 4)炭酸水の管腔内適用はラット胃・十二指腸のアルカリ分泌を増大させた。胃における反応は炭酸脱水酵素(CA)阻害薬であるアセタソールアミド(AZ)によって完全に抑制されるが、十二指腸での反応はAZにより部分的かつ有意に抑制され、インドメタシンおよび知覚神経麻痺によっても有意に抑制された。炭酸水は十二指腸粘膜においてPGE_2産生を増大した。すなわち、炭酸水によるアルカリ分泌促進は胃と十二指腸で異なり、胃では主としてCA依存的に細胞内で変換されたHCO_3^+を起源とするのに対し、十二指腸ではCA依存性のHCO_3^+分泌に加え、CAにより変換され血中側に排出されたH^+がPGE_2産生や知覚神経を介してHCO_3^+分泌を生じるものと推察された。この過程はNHE1阻害薬やNでBC阻害薬によっても抑制されることから、H^+の細胞外への排出はH^+/HCO_3^+交換およびNa^+/H^+交換体を介して生じるものと推察された。
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