本年度は、研究目的2に使用する予定であった特殊なモデル動物がH18-19年度の間で供与してもらえることになったため、当初H19年度以降に行う予定であった「メタボリックシンドローム病態時には一酸化窒素(NO)による内皮依存性過分極因子(EDHF)産生調節機構は破綻しているか否か」についての検討を急遽先に行うこととした。 SHR.Cg-Lepr^<cp>/NDmcr(SHR-cp)およびSHRSP.Z-Lepr^<fa>/IzmDmcrラット(SHRSPZF)は、自然発症高血圧ラットに肥満遺伝子cpまたはfaが発現したラットである。これらのラットは、高血圧と肥満を自然発症するのに加え、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、高インスリン血症などを併発する、メタボリックシンドロームのモデルラットである。このような病態モデルを用いて、メタボリックシンドローム発症時における腸間膜動脈における内皮依存性弛緩反応の変化、すなわち、NOおよびEDHFを介した弛緩反応の変化を、マグヌス法および本研究で新たに用いる膜電位感受性色素を用いたEDHF依存性過分極反応測定法により測定し、正常動物のそれと比較検討した。 その結果、SHR-cpおよびSHRSPZFともに、メタボリックシンドローム発症時には、腸間膜動脈における内皮依存性弛緩反応が減弱すること、その機序として、平滑筋におけるNOに対する反応性の低下と、EDHFを介した弛緩反応の減弱(弛緩反応性の低下および膜電位変化の低下)が関与することが明らかとなった。すなわち、メタボリックシンドロームのような重篤な病態時には、NOおよびEDHFともにその機能が低下しており、お互いを補足しあうための調節機構が破綻していると考えられた。
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