研究概要 |
骨髄幹細胞移植は,急性,慢性肝不全の新規な治療法として期待されている。我々は,ラット骨髄からCD29+/CD44+/CD49b+/CD90+/CD45-,ビメンチンおよびフィブロネクチン陽性,且つ高い増殖能を有するMAPC類似の間葉系幹細胞を単離,クローン化した。この細胞クローンは約24時間の倍加時間で安定した増殖を続け,300PDLを越えても正二倍体性を維持した。本細胞をHGFおよびFGF-4を添加してマトリゲル上で1週間培養すると,アルブミン,α-フェトプロテイン,G6Pase, TO, TAT, CYPIA1, CYPIA2, CK-8, CK-1Sを発現する肝類似細胞へほぼ100%の効率で分化する。また,この肝類似細胞はケモカインSDF-1のレセプターCXCR-4,肝再生因子(HGF, TGF-α)とそのレセプター(c-Met, EGFR),さらに数種類の脂肪関連遺伝子(PPARγ, EAS, LPL, ALBPなど)を発現する。本研究では,上記のMAPC類似幹細胞を増幅,分化誘導した後に,肝不全や肝線維症ラットモデルに移植して,その効果を検討した。 上記の肝類似細胞を90%肝切除による急性肝不全ラットモデルの脾臓に移植したところ,血中アンモニア濃度の増加が有意に抑制され,15匹中5匹が生還した。対照ラットは,術後48時間以内に全例死亡した。また,四塩化炭素投与により作成したラット肝線維症モデルの脾臓内に上記の未分化幹細胞クローンを移植した結果,Picrosirius Red染色およびα-Smooth Muscle Actin免疫染色で示される肝臓の線維化が顕著に抑制された。この線維化抑制効果の一部は,MMP-9の作用による可能性が示唆された。本.幹細胞クローンおよびその分化誘導細胞は短時間に大量生産が可能であり,有用な移植細胞モデルと考えられる。
|