研究概要 |
組織特異的インプリンティングを受ける遺伝子に関して、その発生過程におけるエピジェネティクスの変化と遺伝子発現の関連を細胞レベルで解析を進めていくことが我々の目標である。 平成18年度はマウスSnrpn-Ube3a領域の神経細胞特異的インプリンティング制御機構に関して解析を行った。同領域は多くのインプリンティング遺伝子が存在するが、Ube3aのみ神経細胞でインプリンティングを受けていることを以前我々は報告している。今回は同領域の神経特異的なヒストン修飾に焦点をあて解析をすすめた。ヒストンアセチル化抗体、メチル化抗体を用いたクロマチン免疫沈降法ではNdn, Snrpnでは母親クロマチンの不活性状態が神経細胞、線維芽細胞において認められたが、Ube3aのプロモーター領域では両親アレルとも活性化しており、細胞種類で違いはみられなかった。さらにUbe3aの3'UTR領域を解析したところ、神経細胞でのみ母親クロマチンのK27トリメチル化が亢進していることが判明した。K27トリメチル化はSnrpnプロモーター領域の母親クロマチンにおいても認められた。H3K27はポリコームタンパクにより発生過程においてトリメチル化修飾されることを考えれば、Snrpnプロモーター領域とUbe3aの3'UTR領域が、神経細胞発生過程でポリコームタンパクにより母親クロマチンのH3K27がトリメチル化され、ループを作って同領域を不活性化している可能性が考えられた。今後さらに神経細胞特異的なクロマチン構造の変化とインプリンティングの関係を解析していく予定である。
|