研究概要 |
癌抑制遺伝子p53などの転写因子の核内ドメインPMLボディ集積に関わるMORC3の個体レベルの機能を解析する目的で、Morc3ノックアウトマウスを作成した。 Morc3のノックアウトマウスは、18.5日胚では、メンデルの遺伝形式にしたがって存在したが、出生後0.5日で生存しているマウスは、ほとんどいなかった。そこで、18.5日胚での異常を解析したところ、胸腺の未発達と肝臓の腫大を認めた。組織学的には、胸腺では、ほとんどリンパ球系の細胞を認めず、肝臓の血管周囲に骨髄系細胞の浸潤を認めた。それ故、造血細胞の分化増殖異常が考えられた。14.5日胚の胎児肝臓において、DNAアレイを使って、遺伝子発現の違いを解析したところ、M-CSFRなどマクロファージーマーカーの低下を認めた。そこで、M-CSFによる反応性を観察したところ、マクロファージヘの分化が著しく抑制されていた。 造血細胞の分化異常をさらに詳しく解析するために、14.5日胚の胎児肝臓を致死量の放射線照射された成体マウスに移植する実験を行った。現在の所、例数が少ないが、一部のマウスの肝臓にクローナルな骨髄細胞の浸潤を認めた。今後、さらに、例数を増やし、どのような細胞の増殖が認められるかを観察する。さらに、M-CSFRの発現には、AML1,PU.1,C/EBPαなどの転写因子が関与することが知られている。それ故、このような異常をもたらす転写因子を探り、その転写因子をどのようにMORC3が制御しているかを今後解析していきたい。
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