研究概要 |
急性前骨髄球性白血病(APL)において、高頻度に異常となる遺伝子PMLは、核内のサブドメインであるPMLボディを形成する蛋白をコードし、p53をはじめ多くの蛋白を集積させ、転写を制御する事が知られている。APLにおいては、PML-RARαによりPMLボディは破壊されているが、Pmlノックアウトマウスは、著しい異常を認めない。MORC3は、N末に存在するGHL-ATPaseドメイン依存的にPMLボディに局在し、癌抑制遺伝子p53などの蛋白の局在と活性に関与することを示し、これらの結果を国内外の学会で発表し、論文にも発表した(Mol.Biol.Cell 18,1701-1709,2007)。さらに、MORC3マウスホモログのノックアウトマウスを作成し、MORC3の個体レベルの機能を解析した。Morc3のノックアウトマウスは、18.5日胚では、メンデルの遺伝形式にしたがって存在したが、0.5日で生存しているマウスは、ほとんどいなかった。そこで、18.5日胚での異常を解析したところ、胸腺の未発達と肝臓の腫大を認めた。組織学的には、胸腺では、ほとんどリンパ球系の細胞を認めず、肝臓の血管周囲に骨髄系細胞の浸潤を認めた。それ故、造血細胞の分化増殖異常が考えられた。造血幹細胞の含まれる14.5日胚の肝臓を、致死量の放射線を照射された同系マウスに移植した。その結果、KOマウスから採取した肝臓細胞を移植したマウスは、2ケ月くらいより、皮膚に炎症を認め、脾臓にGr-1,Mac-1陽性の骨髄系細胞の浸潤を認めた。これらの細胞は、マクロファージ系への細胞分化が傷害されており、またc-Kit陽性の未熟な骨髄系細胞であった。これらの成果を第66回日本癌学会学術集会にて発表し、現在、論文を準備中である。
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