アドレノメデュリンは、血管拡張作用や抗酸化ストレス作用を有する多機能性ペプチドである。 申請者は、脂肪細胞におけるアドレノメデュリンの発現を世界で最初に明らかにして、アドレノメデュリンがアデポカインの一つであること証明した。さらに、脂肪細胞分化時においては、アドレノメデュリンの発現を抑制ならびに促進する機構が脂肪細胞には備わっており、抑制にはアドレノメデュリン遺伝子プロモーター領域に存在するADRE-ARが、促進にはSp1結合領域が関与していることを明らかにした。アドレノメデュリン遺伝子プロモーター領域に存在するSp1結合領域には、転写因子Sp1と転写因子AP-2が複合体を形成して結合して、アドレノメデュリン遺伝子転写を促進している可能性を示唆した。 新規アドレノメデュリン関連ペプチドであるアドレノメデュリン2の測定系を確立した。視床下部を含む脳、下垂体、心臓、腎臓における存在を明らかにした。特に、下垂体と腎臓において高濃度であることを明らかにした。また、心臓の心外膜周囲の脂肪組織の免疫組織化学的検討にて、脂肪細胞にアドレノメデュリン2が発現している事実をはじめて明らかにした。副腎と副腎腫瘍におけるアドレノメデュリンとアドレノメデュリン2の発現を検討し、これら2つのペプチドの発現が副腎皮質腫瘍の病態に深く関与する可能性を示唆した。また、アドレノメデュリン2の遺伝子多型と高血圧が関連する可能性を示唆するデータも得られた。 脂肪細胞から分泌されるアドレノメデュリンは、代謝症候群の合併症の進行に防御的に作用すると考えられる。特に、その生理作用から高血圧と高血圧に伴う心臓・腎臓障害の進行を防御していると推測される。今後、代謝症候群の新規治療法の開発に向けて、また糖尿病との病態への関与の解明も含めて、検討を続ける予定である。
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