研究概要 |
本年度は以下の実験を実施した. 1)内皮細胞におけるNrf2の役割の解析 動脈硬化症を抑制するLaminar flowは,培養細胞での実験でNrf2を活性化することが明らかになっている.Laminar flowにより誘導されたNrf2標的遺伝子群は,血管内皮における炎症性のサイトカインや細胞接着因子などの発現を未知のメカニズムで抑制すると考えられている.そこで,Nrf2遺伝子欠損が内皮細胞の炎症性遺伝子の発現に与える影響を個体レベルで解析した.マウス大動脈を単離し,RT-PCRにより解析したところ,Nrf2遺伝子欠損マウスでは炎症性遺伝子であるICAM-1 VCAM-1,MCP-1の発現が野生型に比べて上昇しているという結果が得られた. 2)Nrf2が動脈硬化症の病態形成に果たす役割の解析 上記の結果から,Nrf2は内皮細胞において抗炎症性因子として機能していることが明らかになった.しかしながら,Nrf2はマクロファージにおいては酸化LDLにより活性化され,動脈硬化巣の形成に必須であるスカベンジャーレセプターCD36の発現を誘導することにより動脈硬化症を促進することが考えられている.そこで,動脈硬化症のモデルマウスであるApoE遺伝子欠損マウスとNrf2遺伝子欠損マウスを交配し,二重欠損マウスを作成して実際に動脈硬化症へのNrf2の関与を解析した.予備的な結果では,Nrf2欠損が動脈硬化症を抑制するという結果が得られた.
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