研究概要 |
ATMの相同組み替えDNA修復機能に,c-AblファミリーによるRad51のチロシン燐酸化が関与しているが,その機序は明らかではない.我々は,Rad51-Y315F変異体は,BRCA2との結合やクロマチン結合に異常は認められないが,刺激と関係なくself-associationが充進しており,放射線照射後のRad51focus形成のパターンが野生型とは異なる等,c-AbによるRad51のY-315のチロシン隣酸化が,その機能制御に係わることを示唆する結果を得た.さらに,抗Y-54pあるいはY-315p特異抗体を用いた解析により,c-AbIによるRad51チロシン隣酸化はクロマチン分画でのみ認められることや,c-Ablのクロマチン結合はGlivecで阻害され,Kinase-dead変異体では起こらないことを明らかにした.従って,c-AbIが自身のキナーゼ活性依存性にクロマチン結合(移行あるいは停留)し,それとidependentにクロマチン移行した(おそらくBRCA2依存性に)Rad51のチロシン隣酸化を行い,おそらくはRad51のself-associationあるいはDNA結合を制御することにより,Rad51のchromatin assemblyを促進し,最終的にRad51のfocus/filament形成を促進すると考えられる.今後,DNA損傷によるc-Ablファミリーの活性化と,チロシンキナーゼ活性依存性に起こるDNA損傷部位への集積の機序について,BRCA1とTopBPIの役割に重点をおいて検討すると共に,RadSIの相同組み換えDNA修復能への,分子標的薬剤Glivecの影響について検討する.
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