本研究では、癌細胞の増殖シグナル関連分子および接着分子が、細胞膜周囲で分子複合体を形成して、両者のシグナルが収斂・増強する過程において、GD3などのガングリオシドが果す機能を明らかにすることを目的とする。 平成18年度は、GD3発現によるメラノーマの悪性形質形成におけるインテグリンの役割について主に検討した。GD3安定発現ヒトメラノーマ細胞株およびGD3非発現コントロール細胞株について、インテグリンα2β1、α3β1の発現を確認した。インテグリンβ1をノックダウンして、約80%の発現抑制を行った結果、GD3発現細胞において細胞増殖能および浸潤性の顕著な低下を認めた。コントロール細胞では、インテグリンβ1のノックダウンによる細胞増殖能の低下は認められなかった。浸潤性については、低下は認められたがGD3発現細胞ほど著明ではなかった。GD3発現細胞のインテグリンを介した接着性については、リアルタイム細胞計測システム(RT-CES)、および96 well plateに細胞外基質をコーティングした細胞接着実験により検討した。その結果、RT-CESにおいて、GD3発現細胞は、I型コラーゲン、IV型コラーゲン、およびファイブロネクチンに対する接着性がコントロール細胞に比して増加していた。接着実験においては、I型コラーゲンとIV型コラーゲンに対する接着性がGD3発現細胞で増加していた。ファイブロネクチンとラミニンに対する接着性は検討中である。また、IV型コラーゲンの接着刺激によるシグナル伝達分子の活性化については、GD3発現細胞においてFAK、p130Cas、およびpaxillinのリン酸化レベルの増強が認められた。 更に、GD3発現細胞の癌性形質におけるSrc family kinase(SFK)の関与について検討するために、GD3発現細胞株に発現しているSFKを検討した結果、Yes、Src、FynおよびLynの発現が認められた。現在、GD3発現細胞の癌性形質に関与しているSFKを各々のsiRNAにより検討中である。
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