平成19年度は、GD3発現によるメラノーマの悪性形質形成におけるインテグリンの役割について分子レベルで検討した。GD3安定発現ヒトメラノーマ細胞株およびGD3非発現コントロール細胞株は、インテグリンα2β1、α3β1の発現が認められる。インテグリンβ1をノックダウンして発現抑制を行った結果、GD3発現細胞において細胞増殖能および浸潤性の顕著な低下を認めた。コントロール細胞では、インテグリンβ1のノックダウンによる細胞増殖能の低下は認められなかった。浸潤性については、低下は認められたがGD3発現細胞ほど著明ではなかった。GD3発現細胞のインテグリンを介した接着性は、96well plateに細胞外基質をコーテイングした細胞接着実験により検討した。その結果、GD3発現細胞では、I型コラーゲンに対する顕著な接着性の増強が認められた。IV型コラーゲン、及びファイブロネクチンに対する接着性もコントロール細胞に比して増加していた。ラミニンIでは、コントロール及びGD3発現細胞ともに、ラミニンIに対する接着性が非常に低かった。また、I型コラーゲンの接着刺激によるシグナル伝達分子の活性化については、GD3発現細胞においてFAK、p130Cas、paxillin、およびAktのリン酸化レベルの増強が認められた。 更に、GD3発現細胞の癌性形質におけるSrc family kinase(SFK)の関与について検討した。本細胞株では、Yes、Src、FynおよびLynの発現が認められたが、siRNAによりGD3発現細胞の癌性形質に関与しているSFKを検討した結果、Yesが細胞増殖および浸潤性の増強に関与していることが明らかになった。
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