研究課題/領域番号 |
18590293
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
定 清直 福井大学, 医学部, 教授 (10273765)
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研究分担者 |
堀田 博 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40116249)
長野 基子 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (90304089)
羽溪 朋子 福井大学, 医学部, 助教 (60452124)
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キーワード | C型肝炎ウイルス / 蛋白質チロシンリン酸化反応 / チロシンキナーゼ / ウイルス-宿主間相互作用 / シグナル伝達 / Syk / プロテオーム解析 |
研究概要 |
本研究はC型肝炎ウイルス(HCV)蛋白質による肝細胞の蛋白質チロシンリン酸化反応、特に非受容体型チロシンキナーゼSykと細胞機能への影響について解析するものである。 昨年度は、HCV蛋白質のなかで非構造(non-structural:NS)蛋白質の一つであるNS5Aが、培養肝細胞においてSykに会合することを、NS5A蛋白質を単独に発現させる実験や、全てのHCV蛋白質を同時に発現するHCVレプリコンを用いた実験により明らかにした。平成19年度はよりin vivoに近HCVの感染実験系(HCV J6/JFH-1株)を用いた実験によりNS5AとSykの会合を明らかにした。また病理組織学的解析を行い、通常の肝臓組織においてSykは細胞質にびまん性に発現し、HCV感染細胞では細胞膜付近に斑状に局在し、発現部位が異なることを見出した。変異体蛋白質を作成して解析したところ、NS5Aはアミノ末端1〜175番目のアミノ酸でコードされている領域を会してSykに会合するが、それに加えて中央237〜302番目のアミノ酸でコードされた領域によりSykの酵素活性を阻害する。これらの新しい知見により、NS5Aを介してSykに会合しその生理活性を阻害することが明らかとなった。Sykは乳がんにおいて癌抑制遺伝子と位置付けられているが、HCVのNS5AによるSykの阻害効果は、HCVによる発癌のメカニズムの一つである可能性が十分考えられる。 本年度はその他、HCVの合併症である糖尿病発症機構についての解析や(投稿中)、HCVのプロテオーム解析を行った。また、新規アダプター蛋白質とヒト遺伝疾患ケルビズム症との関連について予備的な解析を行い、総説を発表した。
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