PKN3は低分子量GTPase Rhoおよび脂肪酸依存性セリン/トレオニンリン酸化酵素PKN1のアイソフォームの一つである。PKN3はがん細胞系列において高い発現がみとめられることから、がん化およびがん悪性化において何らかの役割を担っていることが推測され、その可能性を検討するため、昨年度PKN3ノックアウトマウスの作成を行った。PKN3ノックアウトマウスは、マクロ解剖上および生殖・摂食行動などにおいて明らかな異常を認めていない。PKN3ノックアウトマウスから、マウス胎児線維芽細胞を採取し、創傷治癒モデル系での細胞運動能について野生型マウスのそれと比較した。また、マウス胎児線維芽細胞にSV40 largeTを導入して不死化したのち、活性化型RasV12のフォーカス形成能におよぼすPKN3ノックアウトの影響を検討した。PKN3ノックアウトマウスラインを、C57BL/6へ戻し交配を進めるとともに、自然発がんするptenK0マウスとの交配を行い、発がんおよび転移におけるPKN3の影響を検討中である。(この自然発生したがん細胞を、C57BL/6の野生型マウスへ移植・維持できることが明らかとなった。)またPKN3の創薬ターゲットとしての可能性を踏まえて、種々のPKN3欠失変異体の酵素活性を調べるとともに、PDK1によるPKN3のリン酸化がPKN3の活性やそのタンパク質安定性におよぼす影響を検討した。また、種々のPKN3抗体を新たに調整し、正常組織においてPKN3が検出できる部位、環境因子がないかについて検討を行った。
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