研究課題
基盤研究(C)
本年度は、6週齢の高脂血症モデルマウスである(apoE欠損マウス[apo^<-/->]、LDL受容体欠損マウス、[ldlr^<-/->]に左Helicobacter pylori (H.pylori ; Hp)のSS1株を経口感染させた後、10週間高脂肪食を負荷して飼育した。16週齢時に屠殺し、胸部大動脈の標本を作製し、動脈硬化の進展を解析したところ、対照群に比し著しい動脈硬化病変の形成が認められた。また、H.pylori感染とともにH.pylori由来の熱ショックタンパク質60(Hp-HSP60)による皮下免疫あるいは、予め別のマウスに免疫して得られた抗Hp-HSP60抗体の静脈内投与により、(抗生剤による除菌処理と同等に)H.pylori感染により惹起された動脈硬化が有意に減少した。これらの処置により、誘導される免疫応答について精査するため、屠殺時にマウスより脾臓細胞を培養し、Hp-HSP60に特異的なTh1、Th2応答、マクロファージやT細胞の活性化について解析した。H.pylori感染群のマウス脾細胞では、Hp-HSP60刺激下、IFN-γ、IL-12の産生量の増加、T-bet、CXCR3、DEC205などの発現量の増加が認められ、抗原(Hp-HSP60)に特異的なTh1応答が確認された。ところが、抗生剤による除菌群、免疫群、および抗Hp-HSP60抗体投与群では、感染により誘導されたTh1応答が動脈硬化の抑制と共に低下していた。一方で、これら治療群では、逆にTh2誘導(IL10産生やGATA3発現の増加)が認められた。また、抗γδΤ抗体(GL3)のapo^<-/->投与によりγδΤ細胞を除去するとH.pylori感染によって惹起される動脈硬化の発症が見られなかった。この様に、H.pylori感染(すなわち、Hp-HSP60に対するTh1応答の惹起に伴って動脈硬化が進展すること、および、抗生剤による除菌、Hp-HSP60の免疫(ワクチン)、抗Hp-HSP60抗体の投与(免疫療法)によって、Th1応答依存的な動脈硬化が抑制されることが明らかになった。今年度明らかになった免疫応答の関与する動脈硬化の制御機序に基づいて、平成19年度は、ヒトの前向き試験やさらなる動物モデルによる解析を行い、慢性感染が惹起する動脈硬化の撲滅に関する研究を推進する。
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