切断されないHB-EGF変異体はマウスにおいて拡張型心筋症に類似した心臓形態を示すことがすでに報告されている。この変異体による細胞機能への影響を調べるために、まず胎児線維芽細胞を採集してアデノウイルスにて遺伝子導入を行った。その結果変異体導入細胞では細胞増殖の低下が認められ、その原因がc-myc遺伝子の発現抑制に起因していることが明らかとなった(投稿中)。よって心筋細胞においても同様の結果が得られるかどうかを検討するために、現在心筋細胞株や新生児マウス心筋細胞を用いた実験計画の準備を進めている状態である。 またマウス胚性幹細胞(ES細胞)を用いた培養系において中胚葉系前駆細胞への分化を60%以上に誘導する条件を確立し、分化した細胞およびマウス心筋細胞株からtotal RNAを抽出した。これらをサンプルとして我々の研究室で作成したZnフィンガー型転写抑制遺伝子DNAマイクロアレイチップを用いた遺伝子発現パターンについて解析を行った。その結果特異的に変化する7遺伝子の抽出に成功し、RT-PCRにてその発現の変化が一致することも確認できた。現在はさらにES細胞から心筋細胞への分化誘導を行いさらに特異的発現遺伝子解析の範囲を広げている。また同時に抽出した遺伝子のクローニングおよびsiRNAを用いたノックダウンによる分化誘導の影響を検討中である。
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