本研究はファンコニ貧血(FA)原因遺伝子タンパクであるFancD2の、モノユビキチン化、そしてその後の脱ユビキチン化による細胞内動態の制御機構の解明を目的とする。そのため、まずFancD2が欠損している患者細胞PD20に、GFP融合FancD2を発現させた細胞株を樹立した。また、FancD2をモノユビキチン化するユビキチンリガーゼであるFancLはFancD2と直接的な蛋白結合することを明らかにしており、その結合においてはFancLのPHD fingerドメインが必要であることがわかった。このPHD fingerドメインは、FancLとその他のファンコニ貧血原因遺伝子タンパクとの結合にも必要であることを明らかにした。さらに、FancD2のモノユビキチン化変異体をノックインしたニワトリDT40細胞を作成し、その細胞の機能解析を行った。その結果、FancL及びFancLによるFancD2のモノユビキチン化が、DNA損傷修復に必要であることを明らかにした(Genes to Cells in press)。 現在、作製したGFP融合FancD2発現細胞において、DNA損傷後のFancD2の細胞内動態の解析をおこなっている。また、siRNAによって、モノユビキチン化FnacD2を脱ユビキチン化するUSP1を抑制したときの、DNA損傷後のFancD2のモノユビキチン化、細胞内分布の解析をおこなうと同時に、FancD2のクロマチン局在を検討している。今後さらに、FnacD2のフォーカス形成の有無とその形態、及びその消失の速度、細胞周期におけるフォーカス形成のタイミングとその形態など、核内動態の解析を行って行く予定である。
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