研究概要 |
未だ原因不明の疾患の患者が,偶然に染色体均衡型構造異常を合併している場合(DBCRs),構造異常により障害されている遺伝子が責任遺伝子であることを明らかにできる場合がある.一方,構造異常染色体の切断点に既知の遺伝子がなければ,その症例の構造異常は臨床症状とは無関係と考えられてきた.しかし,我々はそういったDBCRs症例の中に,構造異常によりゲノムの核内立体構造が変化して関連遺伝子が位置効果の影響をうけている症例の存在を考えた.その仮説を検証するために,わが国の3D-FISH解析研究の第一人者である田辺秀之先生(総合研究大学院大学,助教)のご指導を仰ぎ3D-FISH解析技術を習得し,さらにその応用を試みている.まず,3次元の核内でターゲットとする染色体間の距離や核内配置を検討するために、核の3次元構造を保った状態で固定する技術を習得した.次に,レーザー共焦点顕微鏡による3D-FISH解析に適したプローブのデザイン,解析する核の選択方法,解析ソフトの条件設定などについて経験を積んだ.そのうえで,均衡型構造異常のひとつであるt(11;22)(q23;q11)症例をターゲットとして,11番と22番染色体のペインティングプローブと,2種類の派生染色体(派生11番,派生22番)の各切断点をそれぞれ含むプローブを組み合わせて,t(11;22)症例においてターゲットとする4種類の染色体(正常11番,派生11番,正常22番,派生22番)を3次元核内にて識別が可能かどうかについて検討したが,上記のデザインでは4種類の染色体の識別が困難であるという結論に達した.そこで,現在,本解析技術の検出限界について別途検討しながら,今後実施する他症例の解析をも視野に入れた,切断点付近の複数のDNAクローンを組み合わせることによって4種類の染色体を識別する,新たなプローブのデザインを考案し解析を進めている.
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