研究課題
ゲノム刷り込みは、一対の対立遺伝子のうち一方の親由来の遺伝子のみが発現する現象である。ヒト11p15.5領域の刷り込み破綻はBeckwith-Wiedemann症候群(BWS)や各種腫瘍と関連する。11p15.5に存在するKIP2/LIT1刷り込みドメインの調節機構を解明するため以下の研究を行った。1.刷り込み調節領域DMR-LIT1をプロモーターにもつnon-coding RNA LIT1はDNAメチル化やヒストン修飾などの刷り込みマークの決定や刷り込み遺伝子の発現調節に関わっている可能性がある。LIT1は父性発現する遺伝子であるため、父性11番染色体を1本保持する雑種細胞を用いて、LIT1遺伝子を改変した。LIT1転写物は本来10kbを越すが、遺伝子改変により0.2kb、1.1kb、6.6kbの短いLIT1転写物を産生する3種類の細胞(truncation細胞)を作製した。LIT1転写物が短くなくなっていることをRT-PCRで確認したのち、周辺の母性発現刷り込み遺伝子KvLQT1の発現量を定量PCRで解析した。truncation細胞では、コントロールに比べ最大100倍発現量が増加していた。non-codingRNALIT1が刷り込み遺伝子KvLQT1の発現を調節していることが示唆された。2.新たな刷り込み制御因子を同定するため、刷り込み破綻を薬剤耐性でスクリーニングできる細胞の作製を試みた。刷り込み遺伝子Kip2の下流にIRESにつないだneo遺伝子を挿入した組み換えベクターを構築し、マウスES細胞ヘエレクトロポレーションにより導入した。96クローンをPCRによりスクリーニングしたが、組み換えクローンは得られなかった。現在、さらにスクリーニングを進めているところである。組み換えクローンを単離したのちKip2-Neoノックインマウスを作製し、胎仔線維芽細胞を得る予定である。
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