ベクター挿入部位近辺のプロモーター活性を検出するエキソントラップベクターの人工スプライスサイトが設計どおりに働いているかどうか確認するために、人工エキソン上のプライマーから5' RACEを行った。RACE産物を解析したところ約半数は細胞のプロモーターから転写されておりスプライスも想定どおりに行われていた。残る半数はベクターの内部プロモーターから逆向きに転写されていた。この非特異的なプロモーター活性がSIN-MSCVベクター内にある場合とSIN-HIVベクター内にある場合で違いがあるかどうかGFPを発現させることにより確認した。プラスミドのトランスフェクションではどちらのベクター内にあってもほぼ同程度の活性を示したが、ベクターを感染させた場合にはSIN-HIVベクターの方がかえって高い活性を示した。これはSIN-MSCVベクターの高いトラップシグナルが、正に挿入変異による細胞の転写活性を反映していることを示している。 内部プロモーターをレトロウイルスのLTRプロモーターから人由来のEF1αプロモーターに変更した場合のトラップレベルを検討したところSIN-MSCVベクターではLTRプロモーターが約38倍上昇させていたところを約2.4倍の上昇まで抑えることができた。SIN-HIVベクターで同じく1.8倍の上昇が1.5倍の上昇に抑えることができた。 次に、このシステムを用いて、ニワトリβグロビン遺伝子由来のインスレーターにより挿入変異をどの程度抑制できるかどうか検討した。SIN-HIVベクターを用いた場合にはインスレーターの効果を確認することができなかったが、SIN-MSCVベクターに用いた場合にはある程度挿入変異を抑制できることがわかった。(ベクター内部にエンハンサーがない場合はトラップレベルが約3%まで減少するが、インスレーターを使用した場合には14%-72%に減少する。)
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