卵子は、加齢変化に感受性の高い組織と考えられており、高齢婦入の妊孕性低下の主因の一つである。実際に、高齢不妊症患者の卵子核を一定の環境下に曝すと、妊娠成功率がある程度回復することから、染色体構造等の遺伝学的異常に加え、可逆的な因子の関与する加齢変化も存在し、これらが卵子の質を規定していると考えられる。しかし、卵子老化の本質は明らかでない。本研究では、エピジェネティックなゲノム機能制御に着目し、加齢に伴うDNAメチル化状態の変化と、その抑制法の開発を目的とした。哺乳類卵子のエピゲノム解析(DNAメチル化状態の解析)は、得られる卵子数に技術的制限があるため、複数領域の詳細な解析は現在まで二つのグループからしか報告されていない。我々はまず若年健常卵子を直径で分類し、・そのDNAメチル化状態の詳細を解析した。一部既報と一致しない解析結果も得られたが、ほとんどの領域で、DNAメチル化状態と卵子径は正の相関が見られた。また、48週齢前後のマウスから効率的に卵子を回収する手法を確立し、これらの少数の検体を偏り無く増幅し、DNAメチル化状態を検討中である。今後、十分な直径を呈する卵子を用いて、若年健常卵子と加齢卵子のDNAメチル化状態の相違を、詳細に解析する。
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