近接する複数のスプライス供与・受容部位を互用する事例は選択的スプライスデータベースに多数収録されているが、EST (Expression Sequence Tag)に基づいており、別の実験手段で検証される必要がある。受容部位を互用する3塩基差例は200例以上をRT-PCR法で確認できたが、2塩基差例は全く確認できなかった。本年度、4〜6塩基差例についてRT-PCR法で検証した。転写産物が複数のESTで代表され、かつ、アイソフォーム比が極端に偏向していない事例のほとんどで確認できた。近位部位と遠位部位の使い分け比率の組織による変動は、3塩基差事例ほどには認めなかった。確認できた4〜5塩基差事例のほとんどが、翻訳開始直前部位に生じたものであった。 微細選択的スプライスにおける2部位間の使い分け比率を規定する要素を探索したが、明示的な配列は存在しないようだった。患者に生じた突然変異によって、疾患責任遺伝子のスプライス異常を呈する例が蓄積してきた。これらも総合し、スプライス部位の選択を、複数部位のポテンシャル競合と捕らえて解析した。スプライス受容部位(内)の突然変異によってスプライス異常を呈した例について、その変異を保ったままで、数十塩基離れた部位に別の変異を導入することによって、本来のスプライス部位を使用できるよう回復させることに成功した。この実験結果は、ポテンシャル競合説を支持するものと考える。
|