研究概要 |
非アルコール性脂肪性肝炎"non-alcoholic steatohepatitis(NASH)"は、糖尿病や肥満、高脂血症などの「生活習慣病」を背景として出現する進行性肝疾患である。「NASH予備軍」は増加の一途にあると推測され、その3%が将来的に肝硬変・肝癌に進展するとの報告もあることから、早急な社会的対応が望まれている。しかしながら、NASHの病態はいまだ十分に解明されておらず、診断法の確立や適切な予防法・治療法の開発が急務である。本研究では、ヒト肝生検組織、及びNASHモデル動物を用いて、NASHの発症・進展メカニズムを多角的に解析することを目的としている。平成18年度は病態機序の解明に取り組み、酸化ストレスの関与や糖化反応(特にAGE-RAGE系)の関与を明らかにした。また、異なるメカニズムによって発症する新規NASHモデルを2つ報告した。 1.ヒト肝生検組織を用い、DNA酸化ストレスの指標である80HdGがNASH患者の肝細胞の細胞質に特異的に発現することを見出し、これらがミトコンドリアDNA酸化を反映していることを明らかにした。(Nomoto K, et al. AIMM)。 2.高コレステロール食を8-12週投与したウサギがヒトNASHと類似する組織像を呈することを見出し、新規NASHモデルとして報告した。このウサギはインシュリン非抵抗性であり、DMを背景としないモデルとして新規性が高いと考えられた(Kainuma M, et al. J Gastroenterol)。 3.ガレクチン3欠損マウスが6ヶ月齢以降、オスに有意にNASH様病変を自然発症することを見出した。このマウスは糖化反応に関与するAGE-RAGE系を過剰発現しており、NASHの病態形成にAGE-RAGE系の関与が推測された(Nomoto K, et al. J Pathol)。 4.NASHの病態形成とAGE-RAGE系の関与を検討するための基礎的実験として、マウスにおけるRAGEやそのバリアントの発現パターンを検討した(Harashima A, et al. Biochem J)。 5.RAGE欠損マウスを作成し、病態解析を行った。(Mynt KW, et al. Diabetes)。
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