研究概要 |
本研究では,原発性胆汁性肝硬変(PBC)における胆管消失発生の分子機構における胆管細胞老化の関与について検討を進めている。 1.PBCの小型胆管と細胆管における胆管細胞老化の検討 PBCと対照疾患肝,正常肝の人体材料(計110症例)を用いて,細胞老化の指標であるSA-β-gal発現,老化関連p16^<INK4a>,p21^<WAFl/Cip>の免疫組織化学的発現状況を検討した。PBCの障害肝内小型胆管では高率に細胞老化マーカーの発現を認めたが,対照疾患肝,正常肝の小型胆管には細胞老化は見られなかった。また,PBCと対照疾患肝の細胆管と門扉域周囲肝細胞にも種々の程度に細胞老化マーカー発現を認めた。 2.PBCでの胆管細胞老化は,replicative senescenceか,premature senescenceか?:Q-FISH法を用いた検討 一部の肝組織材料を用いてQ-FISH法によりPBCと対照疾患肝の胆管細胞におけるテロメア長測定を行い,胆管病変との関連を比較検討した。PBCの肝内小型胆管と細胆管では対照疾患肝と比較してテロメア長の短縮が見られる傾向にあった。ただし,replicative senescence誘導に十分な程度のテロメア長短縮とはいえなかった。今後,症例数を増やしてさらに検討を進める。 3.胆管細胞老化と酸化ストレスの関連性:免疫組織化学的検討 PBCでの細胞老化における酸化ストレスの関与を検討した。培養胆管細胞を用いた検討では酸化ストレスによる細胞老化の誘導とp16^<INK4a>発現抑制因子bmil発現低下が認められた。肝組織材料を用いた検討では,PBCの障害肝内小型胆管においてbmil発現の低下が認められ,p16^<INK4a>発現亢進と局在が一致した。酸化ストレスによるbmil低下が細胞老化の一因と考えられた。
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