研究概要 |
本研究では,原発性胆汁性肝硬変(PBC)における胆管消失発生の分子機構における胆管細胞老化の関与について検討を進めている。 (1)PBCでの胆管細胞老化は,replicative senescenceか,premature senescenceか:Q-FISH法を用いた検討:平成18年度に収集した肝組織材料を用いてQ-FISH法にてPBCと対照疾患肝の胆管細胞におけるテロメア長測定を行った。PBCでは胆管炎部の傷害胆管において,非傷害胆管,対照疾患肝の小型胆管と比較して有意なテロメア長短縮を認めた。PBCの細胆管においても同様の傾向を認めた。傷害胆管におけるテロメア長短縮は,老化関連マーカー:p16^<INK4a>,p21<WAF1/Cip>発現亢進,DNA損傷マーカー:γH2AXの発現を概ね相関していた(Hepatology 2008,in press)。 (2)胆管細胞老化の分子機構:培養胆管細胞を用いた検討:当教室で株化したラット、マウス培養胆管細胞株を用いてコラーゲンゲル上2次元培養,コラーゲンゲル内3次元培養を行い,酸化ストレス(H_2O_2添加)や炎症性サイトカイン(TNF-α,IFN-γなど)の付加により細胞老化の誘導を試みた。酸化ストレスや炎症性サイトカイン付加により胆管細胞に細胞老化が誘導された。また,酸化ストレスや炎症性サイトカインによる細胞老化の誘導はATM(ataxia-telangiectasia mutated),p53のリン酸化を介したp21発現亢進が見られた。胆管細胞老化誘導の分子機構としてATM/p53/p21経路経路が関与することが明らかとなった。
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