研究概要 |
本研究では、原発性胆汁性肝硬変(PBC)における胆管消失発生の分子機構における胆管細胞老化の関与について検討を進めている。 (1)老化関連p16^<INK4a>,p21^<WAF1/Cip>発現と細胞周期:免疫組織化学的検討:平成18年度に収集した収集した肝組織材料を用いて、PBCと対照疾患肝の胆管細胞における細胞周期マーカー(G1期,cyclin D1; S期, cyclin A)の発現と老化関連マーカーp16^<INK4a>, p21^<WAF1/Cip>発現の関連を検討した。PBC胆管炎部の傷害胆管、細胆管には高率に細胞老化を認め、同部の胆管はcyclin D1発現を示し、cyclin A発現はほとんど見られなかった。老化胆管細胞は明らかにG1アレスト状態にあることが示された。さらに、PBCなどの疾患の進行期にみられる細胆管反応を構成する胆管細胞の一部は明らかに細胞老化を示し、老化胆管細胞には高率にneural cell adhesion molecule (NCAM)発現を認めた(論文投稿中)。 胆管細胞老化の分子機構:培養胆管細胞を用いた検討:当教室で株化したマウス培養胆管細胞株を用いてコラーゲンゲル上2次元培養,コラーゲンゲル内3次元培養を行い,酸化ストレス(H_2O_2添加)や炎症性サイトカイン(TNF-α,IFN-γなど)付加などにより細胞老化を誘導した。炎症性サイトカイン付加による老化誘導は、抗酸化剤(N-アセチルシステイン)前処理によって抑制され、老化誘導経路にROS産生が関与することが示唆された。また、細胞老化誘導後細胞の長期培養により、老化細胞は2週間以上持続すること、老化細胞にはアポトーシスが見られないことが明らかとなった。
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