研究概要 |
ヒト固形癌において癌遺伝子蛋白質(EGFR[Epidermal growth factor receptor],myc等)、転移促進因子(AMF[autocrine motility factor])の異常を解析した。 1)EGFRは、食道癌では過剰発現が50%に、遺伝子増幅が14.2%に認められ、この癌でもEGFR阻害剤の適応となりうる事を示した(Int.J.Cancer, 2006)。 2)EGFRの点突然変異は肺腺癌の29%に認められ、その細胞内シグナルはAktを介する経路が活性化されていた。遺伝子増幅のある例ではStat-3経路が活性化され、遺伝子変化との特異的関連を示すと共に、Akt,Stat-3の分子標的療法の可能性も示した(Mod.Pathol. 2006)。 3)食道癌ではEGFRの点突然変異は無く、骨軟部肉腫では肺癌と異なったスポットに見られた。しかし、下流因子の活性化様式は肺癌と異なっていた(Human Pathol.印刷中)。 4)Topoisomerase IIα遺伝子は胃癌の3%で増幅を認めたが、ほとんどはHER-2(Human EGFR-2)の同時増幅を伴った。また、EGFR/c-myc,HER-2/c-mycの同時増幅が胃癌の5%前後で見られ、遺伝子同時増幅の特異性を示唆した(Human Pathol. 2006, Mod.Pathol.印刷中)。 5)浸潤能規定因子であるAMFは肺癌の67%で発現を認めたが、小細胞癌では細胞内蛋白量が低いがmRNAが高く、非小細胞癌でもその形質の症例では高率に転移を認めた。またAMFがproteasome系で分解される事、扁平上皮癌の分化誘導因子としても機能すること、AMFの細胞外へ分泌能が高い腫瘍群でリンパ節転移が高い頻度である事を報告した(J.Pathol. 2006)。
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