研究概要 |
甲状腺癌は予後の良い癌として知られているが、低分化癌や未分化癌は予後の悪い腫瘍で、現在でも有効な治療法は確立されていません。そこで、予後の悪い低分化、未分化癌の将来の治療法の確立と予後の改善を目的として遺伝子背景を検討することにした。 現在まで、甲状腺の分化癌から低分化癌、未分化癌へのプログレッションにおける遺伝子背景については不分明で、またその形態的なクライテリアも十分に確立されていない。そこで、甲状腺癌のプログレッションの形態的な客観性を確立する目的で、イタリアのトリノでコンセンサスミーティングに参加し、甲状腺低分化癌の病理学的クライテリアについてまとめた(VOLANTE et al. Am J Surg Pathol 31, 2007)。一方、甲状腺癌の遺伝子背景については、昨年までの実績を踏まえて、B-Raf蛋白の発現との関係を免疫組織化学的に検討したところ、甲状腺癌ではB-Raf蛋白の発現が更新していることが証明された(Kondo et al. Hum Pathol 38, 2007)。さらに現在は甲状腺未分化癌でのB-Raf遺伝子やRET遺伝子の発現について検討しており、RET遺伝子は甲状腺癌のプログレッションに関与する可能性は少なく、B-Raf遺伝子の関係が重要であることが考えられた(Nakazawa et al.投稿中)。さらに、現在まで検討されたことのない甲状腺未分化癌と分化癌の混在例の遺伝子背景を検討し、未分化癌の多くが分化癌からのプログレッションによることを分子病理学的立場から証明することができた(Mochizuki et al.投稿中)。さらに、他の遺伝子についても将来検討していくことを計画している。
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