研究概要 |
レーザーマイクロビームイクマロティセクション法にて、ヒト前立腺癌、特にホルモン非依存性前立腺癌の各症例組織切片の腫瘍部より目的とする細胞を採取し、cDNAマイクロアレイ解析法を応用することによりホルモン非依存性前立腺癌で特異的に発現している癌関連遺伝子の道程を試みた。cDNAマイクロアレイ解析に関しては、National center for Biotechnology InformationのUniGeneデータベースを基に選択された23,040種のcDNAを有するcDNAチップを使用し、Imaging Research社のArray Visionソフトウエアを用いて解析を行った。その結果ホルモン非依存性前立腺癌における新規癌関連遺伝子産物としてPKIBを同定し(oncogene、submitted)、その連遺伝子産物を抗原として抗体を作製した。作製しだ抗体を用いて免疫組織化学的に前立腺癌症例を検討したところ、その発現は、正常前立腺では減弱しているが、癌組織では、症例により程度の差がみとめられるものの発現がみられ、特にホルモン非依存性前立腺癌の全17症例、およびホルモン依存性前立腺癌においてはGleason scoreが高い症例に有意に高発現を示す結果となった。前癌病変としてのPINについての発現に関しては、ホルモン非依存性前立腺癌症例におけるPIN病変自体の同定が困難であり、今後の課題となった。今後はホルモン依存性の有無の鑑別診断に応用し、その後の外科療法、ホルモン療法、化学療法もしくは放射線療法の選択や、再燃癌治療方針決定に利用が可能か検討する予定で、さらにホルモン非依存性前立腺癌症例における新規治療法としての分子標的治療の可能性もあわせて検討する。
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