研究概要 |
1)骨肉腫:四肢、体幹骨原発の骨肉腫症例で肺転移を来し、肺転移巣の切除を受けた30例を対象として原発巣と転移巣におけるケモカインレセプターであるCXCR4と血管新生因子であるVEGFの発現を免疫組織化学的に比較した。さらに血管新生の指標としてCD34免疫染色によるMicrovessel density (MVD)と増殖能の指標であるMIB-1 labeling index (LI)を原発巣と転移巣で比較した。CXCR4発現とMVDは原発巣に比較して転移巣において有意に高かったが、VEGF発現は両者で有意差を認めなかった。CXCR4発現とVEGF発現の間には相関関係を認めた。また全腫瘍の解析ではVEGF発現の高い腫瘍ではMIB-1 LIが有意に高値であった。さらに原発巣でVEGF発現の高い症例は予後不良であった。これらの結果より骨肉腫においてはCXCR4発現は転移進展に関与し、VEGF発現は肺転移を来した症例の予後因子となりうることが示唆された。この結果はModern Pathologyに誌上発表した。 2)悪性軟部腫瘍:凍結標本を用いmRNA発現量の測定を行なった。具体的には凍結標本が使用可能な種々の組織亜型を含む悪性軟部腫瘍154例(滑膜肉腫30例、平滑筋肉腫10例、悪性末梢神経鞘腫瘍15例、悪性線維性組織球腫30例、多形型脂肪肉腫3例、高分化型脂肪肉腫6例、粘液型/円形細胞型脂肪肉腫26例、隆起性皮膚線維肉腫6例、横紋筋肉腫12例、PNET/軟部Ewing肉腫8例、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍4例、線維形成性小円形細胞腫瘍2例、類上皮肉腫2例)よりRNAを抽出し定量的RT-PCR法ににてCXCR4,VEGFおよび内因性コントロールとしてGAPDHのmRNA発現の定量を行ない、GAPDH発現による補正を行なった。現在データーを解析中である。また来年度にこれらの症例の免疫染色を行ない、臨床病理学的事項と比較する予定である。
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