1.被爆者甲状腺乳頭癌のRETIPTC遺伝子再構成:RT-PCRにより89.5%でTubulinの発現の増幅は可能であったが、RETIPTC1とPTC3は検出できなかった。 2.RET遺伝子のFISH解析:1例にRET遺伝子増幅を認めた。131Iによる内照射治療後の再発性腫瘍で未分化癌であった。その他、RET増幅は放射線関連乳頭癌と低分化乳頭癌に認めた。発症機構にゲノム不安定性の関与が推察される。 3.被爆者濾胞上皮のゲノム不安定性:53BP1フォーカス形成は癌細胞で有意に高度で、上流分子のpATMやp53と共局在する。癌周囲の濾胞上皮の一部でも53BP1フォーカスがみられ、癌化過程の初期のイベントである可能性がある。 4.BRAF遺伝子変異:被爆者乳頭癌14.9%にT1799A点突然変異を認め、85.1%は野生型であった。変異群と野生群との間に被爆の影響は認めなかった。 5.甲状腺癌RET遺伝子増幅とゲノム不安定性:乳頭癌のRET遺伝子増幅は放射線誘発と高悪性度群に限られる。53BP1発現は、腺腫でDNA損傷応答型、未分化癌では修復異常型へと変化した。ゲノム不安定性は良性腫瘍の時期より誘導され、癌化進展とともに亢進することが示唆される。放射線誘発乳頭癌の53BP1現型は修復異常型であった。放射線誘発甲状腺癌のRET増幅へのゲノム不安定性の亢進の関与が示唆される。
|