研究概要 |
剖検症例および膵切除症例(5症例)を用いた膵管の走行に関しては,バリエーションまでは正確に把握できなかったが,少なくともハムスターなどとは若干異なり,膵小葉単位は血管や膵管に必ずしも対応していない可能性が示唆された.また,膵管の走行の規則性に関しては,明らかなものは見出すことができなかったが,今後さらなる検討が必要と思われた. PanINにおける剖検症例(30例)における頻度であるが,PanIN-1はきわめて頻度が高く,ついでPanIN-2の頻度が高いのに対して,PanIN-3は,その定義にもよるが,剖検例ではきわめて遭遇することが困難な病変と考えられた.このうち臨床的に問題となってくるのは,PanIN-3であるが,IPMNの周囲にPanIN-1ないしはPanIN-2に相当する病変がみられることがあり,特にgastric typeのIPMNでその頻度が高く,PanINとIPMNの初期病変を考える上で興味深い所見と思われた. Cancerization of the ductに関しては,24例の浸潤癌を用いて,elastic Masson Goldner染色やDPC4などの抗体を用いて検討を行った.elastic Masson Goldner染色は既存の膵管を同定する上ではきわめて有用な染色法であり,膵管上皮の丈の高さから大きく2種類の病変が存在するものと考えられた.すなわち,管状成分を持つタイプと低乳頭状の成分を有するタイプで,前者は浸潤癌が二次的に外側から膵管をinvolveしたもので,後者は膵管内進展やcarcinoma in situの可能性が示唆された.Cancerization of the ductに関してはその定義がややあいまいであるため,今後より明確な定義づけが必要であるが,その際,今回の結果が役立つものと思われた. PanINの段階がPanIN-3へと上昇するにつれてp16,DPC4などを含め,分子生物学的にもある程度遺伝子異常との相関がみられた.しかし,文献的に記載されているようなclear cutでない症例も存在しており,そういった症例では他のマーカーによる検索が望まれる.
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