研究概要 |
平成19年度はIPMNに焦点を絞り検討した.これまでに4つの亜型が提唱されているが,実際にはgastric typeとintestinal typeが主体であり,pancreatobiliary typeとoncocytic typeに関しては, gastric typeをlow gradeとhigh grade病変に分けた場合に後者に相当する可能性が極めて高いと考えられ,gastric typeの晩期病変の可能性が示唆された. IPMNに関しては,その初期病変としてPanINの可能性が高く,膵癌の発生ルートとしてはPanIN-1からPaIN-3を経てcarcinomaに移行するものとPanlNからIPMNのgastric type(low grade)を経てhigh gradeに移行し,carcinomaに移行するものが存在する可能性があると考えられた.IPMNの初期病変の定義は難しいが,大きさとしては5mmから1cmの間と考えられる. 遺伝子異常としては,必ずしも亜型との相関は同定できなかった.粘液形質に関してはIPMNではMAC5ACが陽性と考えられていたが,MAC5AC陰性でIPMNに類似する組織を呈する症例が存在する可能性が示唆されたが,症例が少なく明確な定義づけは困難であった.これらの症例は粘液産生が乏しく,acinar cellのマーカーは陰性で,ductal differentiationがみられることからやはり膵管内病変と考えられる.この一群の腫瘍に関しては,MUC6が陽性のものと陰性のものが存在した. 細胞診では,gastric typeは平面的な細胞集塊で,核は類円形で,基底側に規則的に配列するのに対して,intestinal typeでは立体的な集塊が増え,半島状や絨毛状のものがみられ,核の配列に乱れが認められる傾向がみられた.悪性のものでは通常の腺癌同様,極性の乱れ,結合性の低下,核クロマチンの増加,大型核小体,壊死物質などが認められた.
|