隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)は時に線維肉腫様変化を示し、転移する可能性が高くなる。この悪性転化の機構を明らかにするために、分子遺伝学的解析を行った。検討した症例は19例で、13例は通常型DFSP、6例は線維肉腫様DFSP (DFSP-FS)である。免疫組織化学的にCD34、p53、Ki-67の発現を検討した。またホルマリン固定、パラフィン包埋材料を用いて、RT-PCR法によりDFSPに特徴的とされるfusion gene、COL1A1-PDGFBを、またFISH法によりPDGFBの転座の検出を試みた。免疫組織化学的に、CD34陽性所見がDFSP領域では16/17(94.1%)、FS領域では5/6(83.3%)で得られた。Ki-67標識率はDFSPで1-15.5%(平均4.7%)、FSで9.7-31.4(平均20.2%)で、後者での標識率が有意に高かった。またp53の過剰発現が認められたのはわずかにDFSP-FSの2例であった。RT-PCR法によりCOL1A1-PDGFB fusion transcriptが、DFSPの14/15(93.3%)、FSの5/5(100%)と、大部分の症例で確認された。COL1A1の切断点は、exon 5(2例)、8(1)、11/46(1)、20(1)、23(4)、26/31(1)、32(4)、38(1)と多彩であり、DFSPとDFSP-FSでは明らかな違いはなかった。また両領域の比較が可能であったDFSP-FSの4例では、両者の切断点は同一であった。FISH法によるPDGFBの再構成はDFSP領域で12/13(92.3%)、FS領域で4/5(80%)で確認された。今回の検討から、DFSPおよびDFSP-FSのほぼ全例でRT-PCR法とFISH法によりPDGFB遺伝子の再構成が確認され、これらがDFSP腫瘍群の診断に有用であることが示された。p53過剰発現はDFSP悪性化の主要因とは考えられず、別の分子機構の関与が推測された。
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