研究概要 |
●新規がん関連遺伝子NibanはEkerラット腎癌の多段階発癌モデルからラット腎発癌早期に発現している遺伝子として発見された遺伝子である。Nibanの種々臓器、病変での発現解析はなされておらず、今回、特に甲状腺病変その他に付き解析を進めている。 ●免疫組織化学によれば、甲状腺では正常部では発現せず、乳頭癌および好酸性腫瘍(良性、悪性を含む)に高頻度で発現がみられた。癌以外でも橋本病における好酸性細胞に陽性となった。また好酸性細胞を有するワルチン腫瘍、腎臓のoncocytomaでも陽性となった。 ●マイクロディセクトした腫瘍でmRNAやタンパクを解析した。乳腺、甲状腺その他の組織でのNiban免疫染色での結果はmRNA発現の有無やWestern blottingでのタンパク発現と一致していた。 ●甲状腺癌、特に乳頭癌で高頻度に変異のみられるGrim遺伝子変異との相関をみた。Niban陰性例では前例Grim変異がみられたが、現在までNiban陽性例との有意差は認めていない。 ●Niban発現の有無にNiban遺伝子変異が関与するかを検索した。乳癌および甲状腺ではこれまでにNiban遺伝子の変異は認めていない。 ●Niban発現の有無にNiban遺伝子プロモーター領域のメチル化が関与するかを検討した。乳腺、甲状腺、その他臓器でメチル化は検出されなかった。よって、メチル化が発現調節に関与する可能性は低い。 ●In situ hybridizationの準備段階として、特異性の高い領域にRNA probe用ベクターを作成している。 ●以上、ストレスタンパクの可能性があるNibanは、高発現状態が甲状腺などある種の癌発生に重要な役割を果している可能性がある。甲状腺では好酸性腫瘍にも発現がみられる事から、ミトコンドリア機能異常と関係があるかもしれない。しかし、乳腺や甲状腺におけるNiban発現の有無に関わるような遺伝子変異やメチル化などは認められず、古典的がん遺伝子やがん抑制遺伝子の範疇に入る可能性は低いであろう。 ●次年度にはIn situ hybridizationやin situ RT-PCR,による組織内での発現細胞の正確な同定、免疫染色や核種抗体の染色性との比較、免疫電顕、isoformなどの検索、凍結材料からのミトコンドリア機能の異常との関連を含めた検索を進めたい。
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