研究概要 |
新規がん関連遺伝子NibanはEkerラット腎癌の多段階発癌モデルから発見された遺伝子である。甲状腺では正常部では発現せず、乳頭癌および好酸性腫瘍(良性、悪性を含む)に高頻度で発現がみられる。今年度は主に下記の解析を行った。頭頸部扁平上皮癌でのNiban発現:97.6%の浸潤癌にNiban免疫染色陽性となった。また、66.7%の異形成〜上皮内癌でも発現されており、この腫瘍でもNibanは早期から関与することが明らかとなった。Grim変異:乳頭癌で高頻度に変異の見られるGrim遺伝子変異との関係を検索したが、Grim変異の有無とNiban発現には相関を認めなかった。Niban promoter領域:SSCPにてpromoter領域の変異を甲状腺癌、乳癌等でスクリーンしたが体細胞レベルでの変異は認めなかった。Bisulite SSCP,COBRA法にてプロモーター領域CpG islandでのメチル化を検討したが、甲状腺癌、乳癌、腎癌、頭頸部扁平上皮癌いずれにもメチル化は認められなかった。よってメチル化は発現調節に関与しないと考えられる。組織発現:Nibanのlsofbrm特異的な組織、細胞発現、各腫瘍での発現部位を同定するために、in situ hybridization及びin situ RT-PCRの検出系を開発しつつある。複数の特異的核酸配列をexpression vectorにsubcloningした。Insert挿入vectorからジゴキシゲニンラベリングによるRNA probe作成、in situ hybridizationの条件を検討中である。またin situでRT-PCRを効率良く検出するプライマー、および反応条件を検討中である。免疫電顕:Nibanの甲状腺癌での細胞内局在を明らかにするため、乳頭癌の電子顕微鏡材料からpostembedding法にて局在を明らかにするべく解析を進行している。 以上、Nibanは甲状腺その他のがんに関与するが、そのメカニズムはいまだ未知の点が多い。本年度の研究はまだ途上であり、in situ hybridization,免疫電顕のデータが出た時点で一段落させる予定。
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