●エラー!NibanはEkerラット腎癌モデルから発見された新規がん関連遺伝子である。Nibanの種々ヒト臓器、病変での発現解析はなされておらず、今回、ヒト甲状腺及びその他腫瘍に付き解析を行った。 ●甲状腺では正常部では発現せず、乳頭癌および好酸性腫瘍(良性、悪性を含む)に高頻度で発現がみられた。癌以外でも橋本病における好酸性細胞に陽性となった。また好酸性細胞を有する唾液腺ワルチン腫瘍、oncocytoma、腎臓oncocytomaでも陽性となった。 ●Niban免疫染色での結果はmRNA発現のやWestern blottingでのタンパク発現と一致していた。 ●甲状腺乳頭癌で高頻度に変異のみられるBRAF遺伝子変異との相関をみたがNiban陽性例との有意差は認めなかった。また、ミトコンドリアに関与するGRlM遺伝子変異との相関も認めなかった。 ●甲状腺癌、好酸性細胞腫瘍、乳癌、頭頸部扁平上皮癌ではNiban遺伝子の変異は認めなかった。Niban遺伝子プロモーター領域CpG islandにはメチル化は検出されなかった。メチル化が発現調節に関与する可能性は低い。 ●頭頸部扁平上皮癌では97.6%の浸潤癌にNiban免疫染色陽性となった。また、66.7%の異形成、上皮内癌でも発現されており、この腫瘍でもNibanは早期から関与することが明らかとなった。 ●Nibanのisoform特異的な組織、細胞発現、各腫瘍での発現部位を同定するために、in situ hybridization及びin situRT-PCRの検出系を開発し条件を検討中である。また、Nibanの細胞内局在を明らかにするため、乳頭癌の電子顕微鏡材料から免疫電顕にて解析を進行している。 ●ストレスタンパクの一種と想定されているNibanは、高発現状態がある種の癌発生に重要な役割を果している可能性がある。乳頭癌や好酸性腫瘍にも発現がみられ、ミトコンドリア機能異常と関連を想定したが、これまでの検討では関連性は明らでない。また、Niban発現の有無に関わるような遺伝子変異やメチル化などは認められず、古典的がん遺伝子やがん抑制遺伝子の範疇に入る可能性は低いであろう。
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