研究概要 |
これまでの研究から,TLS-CHOPキメラ遺伝子に端を発したパスウェイの抑制が粘液型脂肪肉腫の増殖抑制に効果がある可能性が想定されるが,そのパスウェイに関わる分子群から有効な標的分子を単離することは従来の方法では難しい.また,粘液型脂肪肉腫は,脂肪分化の障害であることから,白血病におけるレチノイン酸のように分化誘導する治療法も考えられる.そこで本研究において,今回ヒト5万種のsiRNAレンチウイルスライプラリーを用いて脂肪肉腫の増殖,分化に関与する分子の単離を試みた.一方,機能性RNAの中でも,miRNAは特に増殖,分化,腫瘍発生に深く関与している.そこでmiRNAに関しても,そのライブラリーの作製を試みると同時に,粘液型脂肪肉腫細胞の治療を考慮し,TLS-CHOPキメラ遺伝子の標的となるmiRNAの単離を行った. 具体的には,ヒト粘液型脂肪肉腫細胞株にsiRNAをコードするレンチウイルスライブラリーを感染させ感染細胞をクローン化し細胞ライブラリーを作製した.また,miRNAに関してライブラリーの作製を試みると同時に,TLS-CHOPキメラ遺伝子の標的となるmiRNAの同定を試みた.具体的には,3T3細胞にTLS-CHOPキメラ遺伝子を高発現させて,遺伝子導入の前後でのmiRNA発現プロファイリングを行った.その結果,TLS-CHOPキメラ遺伝子によって発現が変動するmiRNAを同定した.また,TLS-CHOPキメラ遺伝子の導入によって減少するmiRNAを粘液型脂肪肉腫細胞株に導入すると,細胞の増殖を抑制する事が明らかになった。以上の結果から機能性RNAが新規の薬剤候補となることが示されたと同時に従来化学療法の適応のなかった本疾患にmiRNAが新たな治療の選択肢となる事が示された.
|