研究概要 |
免疫組織化学染色によるTT902,AMACR(α-methylacyl co-A racemase)たんぱく発現の検討 TT902タンパク発現は,ポリクローナル抗体における検討により,微小癌45例中の6例のみ(13.3%)に陽性であったのに対し,臨床癌では72例のすべてにおいて陽性所見を呈した.この結果はTT902タンパク発現態度が腫瘍の大きさ,つまり前立腺癌の発育進展度に関連していることを強く示唆するものである.ただしTT902は臨床癌の癌細胞全域に禰漫性に発現していないため,臨床病理学的な観点からは,針生検組織における陽性,陰性所見から腫瘍の大きさを論じることは困難である.一方AMACRは微小癌で44/45例(97.8%),臨床癌の全例に陽性であった.TT902とは異なり,AMACRは癌発生の初期から発育進展にわたる広い範囲で必要であることが示唆された.またAMACR染色は診断病理学的観点からは,大きさにかかわらず癌であれば陽性を示すことが明らかになったため,針生検での癌体積の予測という観点からは有用でないと考えられる.なおTT902に関してはモノクローナル抗体を作成し,一部の抗体において良好な染色性が得られたため,この抗体を用いて同様の検索を行うための準備中である. FISH(Fluorescent in situ hybridization)によるLOHの検索 FISHにより肉眼的大きさを有する癌(臨床癌)と微小癌における染色体欠失を同定することを試みたが,技術的問題から十分な結果が得られず,本年度までに発表できるデータは存在しない.原因としてプローブの問題,切片前処置の問題などが考えられ,現在までにこれらを中心にして再検討中である.
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