研究概要 |
ヒトの個性、即ち多型と、癌の個性、即ち組織型や遺伝子異常、の相互関係を明らかにすることは、がんの予防(発がん感受性)や治療効果予測に重要である。肺癌を対象として、癌の個性として、組織型・組織亜型とp53変異、MDM2の発現異常を、ヒトの個性とレてp53コドン72とMDM2プロモーター領域の多型を検索し、両個性と腫瘍の臨床病理学的因子との相関を調べることで、肺癌の治療効果予測や発がん感受性に関与する因子を明らかにすることを目的として研究を行っている。 検索対象は、手術切除され凍結保存された肺癌組織と正常組織で、扁平上皮癌(1994-2004年)112例、腺癌(1989-1995年)223例である。腫瘍の組織分類はWHO分類、腺癌の亜型分類はWHO及び腺癌を構成する細胞の形態により分類する、我々独自の細胞亜型分類を用いた。遺伝子に関して、P53変異はPCR-SSCP及びシーケンスを行ってエクソン4-8,9を、MDM2の発現異常は免疫組織化学的に、多型はp53コドン72についてPCR及びシーケンスで、MDM2プロモーター領域を我々の開発したLoop-Hybrid Mobility Shift Assay法で解析し、臨床病理学的因子はカルテを検索した。 本年度は主に扁平上皮癌につき解析を進めた。112例中術後放射線療法または化学療法+放射線療法を受けた患者は18名であった。P53変異は100例解析が終了し、多型解析についてはインフォームドコンセントを受けた症例について連結可能匿名化を行い、p53コドン72について2/3の症例の解析を終了し、MDM2プロモーター領域については今後解析を行う予定である。 一方、腺癌に関しては、すでに全例p53変異解析を終了しており、そのうち半数例で亜型分類及びMDM2の発現解析を終了した。
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