研究概要 |
成人T細胞白血病(ATL)ウイルス(HTLV-1)で白血病の発症に重要なウイルス蛋白の一つであるTaxを標的に、それに対するTヘルパー応答を健常成人末梢血を用いて解析した。アルゴリズム解析でpromiscuousにHLA-DR分子に結合しそうなエピトープペプチドを推測し合成した。樹状細胞にペプチドをパルスしCD4陽性T細胞と共培養することでペプチドに反応するヘルパーT細胞クローンを樹立した。得られたT細胞クローンはいずれもHLAクラスII拘束性であった。二つのエピトープが同定された。一つはTax191-205でHLA-DR1あるいはDR9拘束性で、もう一つはTax305-319でHLA-DR15あるいはHLA-DQ9拘束性であった。いずれのエピトープペプチドも複数のHLAクラスII分子に提示されてT細胞を活性化する性質を持つことからも明らかなようにpromiscuous peptideである。 これらのエピトープペプチドがワクチン療法に寄与するためには、抗原提示細胞がウイルス蛋白を取り込んでプロセスしたものを、樹立したヘルパーT細胞クローンが認識することを証明する必要がある。樹立したT細胞クローンは、1)HLAクラスII拘束性にHTLV-1Tax陽性白血病細胞株を認識しIFN-γを放出した、2)自己の樹状細胞にHTLV-1Tax陽性白血病細胞株から調整したライセートをパルスしたものに反応し、HLAクラスII拘束性にサイトカインを産生した。また、HAM患者末梢血から調整したライセートにも反応した。これらの結果は、今回明らかにされたHTLV-1Tax191-205とTax305-319のエピトープが生体内の抗原提示細胞上にも発現しうるnaturally processed antigenic epitopeであることを示している。したがってATLに対するペプチドワクチンの候補としてヘルパーT細胞から抗腫瘍効果を惹起せしめるエピトープペプチドである可能性が示唆された。 以上の結果は、Clin Cancer Res 12:3814-3822,2006に発表した。
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