研究概要 |
本研究の目的はin vivo Bad siRNA delivery法の開発とそれを用いたラット肝虚血-再灌流傷害の抑制効果の検討である. 平成19年度は研究計画に基づき以下の実験を行った. 1)ラット肝虚血-再灌流モデルの確立 ラットの肝5葉中2葉の門脈および肝動脈をクリップにて30,60,90分間血流を遮断し,それぞれ再灌流後1,3,6,24時間後に肝傷害の程度について検討した.その結果,30分間の血流遮断では虚血肝の組織学的変化は極めて軽微であることが判明した.一方,60分虚血では再灌流後3時間で肝壊死巣の出現が高度で,ALT値も最高値であったが,24時間にはほとんど回復した.90分虚血では再灌流後6時間で肝障害はピークとなり24時間では修復反応が認められた.いずれの肝傷害においても類洞内皮細胞(SEC)および肝細胞のアポトーシスが認められた.最終的に90分虚血モデルがsiRNA delivery効果判定のために適正と判定した. 2)siRNA delivery担体試薬と生体内delivery法の検討 前年度検討したatelocollagenはGFP発現ベクターとの組み合わせで担体試薬として不適であることが判明したため,アミン系およびリピッド系試薬を用いて細胞内取り込みを検討した.しかし,培養SECに対しては毒性の問題を解決することが難しく効率の良い取り込み法を見出すには至っていない.現在,蛍光ラベルしたsiRNAを直接肝へ導入することを試みている. 3)SECアポトーシスとTGFβシグナル 胎仔肝発生におけるSECの成熟分化にはTGFβシグナルが重要であることを見出し(Cell Tissue Res, 2007),さらにTGFβ1がSECアポトーシスを誘導することも見出した.このアポトーシスがBad依存か否か,またsiRNAにより抑制可能か否か検討している.
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