研究概要 |
本研究はRETチロシンキナーゼ下流におけるSproutyファミリータンパク質の役割を解明し器官発生、発癌過程の新たな知見を得ることにある。まずHEK293T細胞にRET, GFRα1とともにSprouty1, 2, 3または4を導入し、下流シグナルへの影響を検討した。Sproutyファミリータンパク質は、同程度にERKの活性を抑制した。一方p38, Akt, JNKなどの活性化には影響は認めなかった。生体内ではSprouty1は腎臓の発生に、Sprouty2は腸管神経の形成に重要な役割を果たすとされているが、2つの機能の違いは発達過程における発現レベルにより調整されていることが強く示唆された。そこでRETの機能性レセプターを発現するヒト神経芽細胞腫株TGWを用いて、GDNF刺激に伴うSproutyファミリータンパク質の誘導を検討した結果、神経芽細胞腫株においてはSprouty2のより高い発現誘導が観察された。さらにTGWにドミナントネガティブ変異を有するSprouty2を導入した結果、GDNF刺激に伴う突起伸長、増殖の著しい抑制が観察された。これまでに遺伝子改変動物によってSprouty2の腸管神経形成における重要な役割が示唆されてきたが、細胞株レベルにおいても確認することができた。こうした結果はCancer Scienceに投稿し受理された(in press)。続いて個体のおけるSproutyファミリータンパク質の役割をさらに明らかにするためにSprouty2に対するsiRNAを用いた臓器培養における検討を予定し、約10種類の合成siRNA、3種類のshRNAの活性を検討した。しかしすべての配列はSprouty2のタンパク量を十分に減弱させるには至らなかったため、臓器培養への導入は断念した。平成18年度の研究計画に挙げた、他の項目は現在も研究を継続している。
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