研究概要 |
本年度は既知のラット前立腺発がん物質である2-amino-1-methy1-6- phenylimidazo[4,5-b]pyridine(PhIP),3,2'-dimethyl-4-aminobiphenyl(DMAB)およびCadmiuimを用いて、これらの発がん物質に共通して発現が上昇/下降する遺伝子を網羅的に検索した。6週齢のラットにPhIP(100mg/kg体重),DMAB(50mg/kg体重)およびCadmium(3mmol/kg体重)を、それぞれDay0およびDay7に投与し、Day10に屠殺剖検して腹葉前立腺からRNAを抽出した。Affymetrix社のRat Genome 230 2.0 Arrayを用い、搭載された31,000個のprobeにおける発現量を測定した。対照群と比較して発がん物質投与群で、発現量が2倍以上に上昇/下降する遺伝子を検索した結果、発現上昇が観察された遺伝子は、PhIPでは40個、DMABでは43個、Cadmiumでは53個で、3つの発がん物質で共通して発現が上昇したものは、oncomodulin(OM)をはじめとする3個であった。また発現低下が観察されたものは、PhIPでは725個、DMABでは744個、Cadmiumでは712個で、3化合物で共通して発現が低下したものは、594個であった。さらに、発がん物質群の腹葉前立腺におけるOMの発現上昇を確認する目的で定量的RT-PCRを行った結果、GAPDHで補正したOMの相対発現量は、対照群で平均0.1に対して、PhIP群で24,DMAB群で5.0,Cadmium群で1.3と発現上昇が確認できた。今後、前立腺発癌におけるoncomodulinの機能を検索し、この結果をもとにoncomodulineが未知の化学物質の前立腺発がん性をスクリーニングする方法が妥当かどうか追究する予定である。
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