研究概要 |
1.胎児型横紋筋肉腫における新規PAX3-TIF2融合遺伝子の同定 胎児型横紋筋肉腫ではこれまで原因となる融合遺伝子は同定されていなかった。我々は、同病型において初めてPAX3-TIF2融合遺伝子を同定した。胞巣型においては、PAX3の転座切断点はintron7の領域に高頻度に局在している。新規PAX3-TIF2融合においてもPAX3切断点はintron7の領域に局在していると予想して、昨年度はこの領域にプローブを設定してSouthern blot解析を行ったが、再構成バンドは検出されなかった。今年度はさらに領域を広げてプローブを設定し同様の解析を行ったが、未だ切断点は同定されていない。 今後の見通しとしては、切断点の範囲を限局していない状況においては、予想に基づくだけでSouthern blot解析を行ってもなかなかPAX3切断点を同定することは困難であり、もう少し切断点を絞り込む必要があると考えられた。そこで、転座切断点を含むことが明らかなBACクローン(約180kb)よりコスミドクローン(平均長40kb)にサブクローン化し、それらをプローブとしてFISH解析を行い、切断点を絞り込むことを考えている。切断点を含むコスミドクローンがわかれば、切断点は40kb以内に絞り込めたことになる。 2.TIF2遺伝子の関与する転座 TIF2遺伝子の関与する転座が他に複数存在しないか、横紋筋肉腫細胞株(Rh2,RD,HKBm,RM2,Rh30)を対象にFISH解析で検討したが、同様な転座は認められなかった。 3.MDM2遺伝子の増幅 FISH解析によって、胎児型横紋筋肉腫細胞株RMS-YMではMDM2遺伝子が高度に増幅していることが明らかになった。今年度はさらに、MDM2の発現量についてもGAPDHを内在性コントロールとしたreal-timePCRによって解析したところ、RMS-YMは他の横紋筋肉腫細胞株(Rh2,Rh4,Rh28,Rh30,Rh41等)に比べて10倍以上に著明に増加していることが確認された。
|