エストロゲン(E2)投与でみられるプロラクチノーマ形成モデルをヌードマウスにて作製した。この下垂体腫瘍内ではVEGFとbFGF発現が上昇し、特にVEGFが顕著に上昇していた。低親和性IGF結合蛋白質IGF-binding protein7(IGFBP7)と微小管調節因子stathminの発現を確認した。下垂体腫瘍細胞培養系でのE2処置は、VEGFとIGFBP7のmRNA発現を上昇させた。IGFBP7発現をノックダウンするとVEGF発現は上昇した。この上昇は血管内皮細胞でもみられた。IGFBP7siRNA処置は、インテグリンβ1クラスター形成の異常、コロニーフォーメーション能の著しい低下を起こした。一方、下垂体腫瘍細胞はソマトスタチン(SST)受容体(SSTR1/2)を発現し、特異的SSTRアゴニスト及びIGFBP7がVEGF発現を減少させた。このようにIGFBP7は下垂体腫瘍形成の抑制に関わる標的分子であると考えられる。また、細胞増殖並びにプロラクチン分泌もSST処置により抑制された。SST処置により腫瘍組織の血管網減少とVEGF発現抑制がみられていることから考えると、SSTRの抗増殖効果はVEGF分泌抑制を介すること、また、VEGFが下垂体細胞に直接作用してその生存・増殖を促進することも示唆された。さらに、E2の増殖促進作用にはERαを介したMAPK経路の活性化が関与し、SSTRはERα受容体介在性の増殖シグナルに対して抑制的に働き、E2処置がSSTR1発現低下を起こしてERα受容体下流の増殖シグナル系の増強をもたらすことを示唆した。SSTはERKのdown-regulationとcdkインヒビター(p27)のup-regulationを誘起することも分かり、プロラクチノーマのSSTRの機能の一端も明らかにした。
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